「重厚長大」系の単語には,ほかにも「高い」・「広い」がありますね.引き続き,「高い」から.

「高い」

「高い」を意味するギリシャ語・ラテン語には以下のものがあります.

「ヒュプソス[ ύψος = hypsos ]」=「高さ」
  >「ヒュプス・/ヒュプソ・[hyps(o)-]=「高い.高所の」
  >「ヒュプセル・/ヒュプセロ[ hypsel(o)- ]」=「高い」
  >「ヒュプス・/ヒュプシ[ hyps(i)- ]」=「高い所で(へ).高く」
 「アルトゥス[ altus ]」=「高い」
  >「アルティ・[ alt(i)- ]」=「高い」
 「エーラートゥス[ elatus ]」=「上へあげられた.高い(背の高い)」
 「エックスケルスス[ excelsus ]」=「高い」> excellent(英)
 「プローケールス[ procerus ]」=「高い.長い(高い.丈のある)」

「高さ」を意味するギリシャ語の「ヒュプソス[ ύψος ]」からは,「ヒュプセロ・[ hypsel(o)- ]」=「高い」,「ヒュプシ・[ hyps(i)- ]」=「高い所で(へ).高く」,「ヒュプソ[ hyps(o)- ]」=「高い.高所の」などのラテン語語根を生じました.
 「ヒュプセロ・」はサウルスと結びついて「ヒュプセロ・サウルス[ Hypselo-saurus Matheron, 1869 ]」=「高い龍」.発見された部位からは,かなり背の高い恐竜が予想されたからです.

「ヒュプシ・」はいくつかの単語と結びついて,複合的な言葉を作り出します.
 ギリシャ語の「ベーマ[ βήμα ]」=「歩み,歩調;演壇,踏み台」をラテン語化したものに結びつけて,「ヒュプシ・ベーマ[ Hypsi-bema Cope, 1869 ]」=「高い踏み台」.妙な表現ですが,発見された中足骨から,ほとんどつま先で立つような姿勢が考えられたためにつけられた名前のようです.

ギリシャ語の「ロプォス[ λόψος ]=牛や馬などの首の背面の隆起したところ.山の背.冠毛.とさか」+ラテン語の語根「・オドン[ -odon ]=〜歯」が合成された「ヒュプシ・ロプ・ォドン[ Hypsi-loph-odon Huxley, 1869 ]」=「高い畦のある歯」.中国では「稜歯龍」と表現しています.

ギリシャ語の「オロプェー[ οροφή = orophe ]」=「屋根.天井」と結びついて,「ヒュプシ・ロプス[ Hypsi-rophus Cope, 1878 ]」もしくは「ヒュプシ・ロープス[ Hypsi-rhophus Cope, 1879 ]」で,どちらも「高い屋根」.どちらも後にステゴサウルスに編入されたと説明すれば,納得できるでしょうか.ステゴサウルスの「ステゴス[ στέγος = stegos ]」は,やはり「屋根.覆い」という意味ですから.

ラテン語で「高い」を意味するのは「アルトゥス[ altus ]」.主に「背の高い」の意味で使われます.声楽での「アルト[ alto ]」の語源.これはそのまま種名として使われています.

「ラオサウルス・アルトゥス[ Laosaurus altus Marsh, 1878 ]」=「背の高いラオサウルス」,「アムプィコエリアス・アルトゥス[ Amphicoelias altus Cope, 1877 ]」=「背の高いアムプィコエリアス」,「プレウロコエルス・アルトゥス[ Pleurocoelus altus Marsh, 1888 ]」=「背の高いプレウロコエルス」,「オルニトミームス・アルトゥス[ Ornithomimus altus Lambe, 1902 ]」=「背の高いオルニトミームス」など.

また,アルトゥスは語根化して「アルトゥ/アルティ・[ alt(i)- ]」になり,さまざまな言葉と結びつきます.
 「角(つの)をもつ.角のある」を意味する「・コルニス[ -cornis ]」に結びついて「アルティ・コルニス[ alti-cornis ]=「丈の高い角をもつ」.これは,「ビソーン・アルティコルニス[ Bison alticornis Marsh, 1877 ]」=「丈の高い角を持つバイソン」にもちいられています.この標本はのちにトゥリケラトプスに編入されたといえば,イメージがわくでしょう.
 「歯」を意味する「デーンス[ dens ]」に結びついて「アルティ・デーンス[ alti-dens ]」=「背の高い歯」.これは「トゥラーコドン・アルティデーンス[ Trachodon altidens Lambe, 1902 ]」=「丈の高い歯をもつトゥラーコドン」にもちいられています.
 「トゲのある」を意味する「スピーヌス[ spinus ]」に結びついてアルティ・スピーヌス[ alti-sipinus ]」=「背の高いトゲのある」.これは「ヒュパクロサウルス・アルティスピーヌス[ Hypacrosaurus altispinus Brown, 1913 ]」=「背の高いトゲのあるヒュパクロサウルス」.
 「トゲのある(もの)」を意味する「スピーナークス[ spinax ]」に結びついて「アルティ・スピーナークス[ Alti-spinax Huene, 1923 ]」.これは「背の高いトゲのあるもの」を意味する属名.
 「胸.胸郭」を意味する「トーラークス[ thorax ]」に結びついて「アルティ・トーラークス[ altithorax ]」=「丈のある胸」.これは「ブラキュオサウルス・アルティトーラークス[ Brachiosaurus altithorax Riggs, 1903 ]」=「高い胸のブラキュオサウルス」に使われています.

類似の言葉には「上へあげられた.高い(背の高い)」を意味する「エーラートゥス[ elatus ]」もあります.これはそのまま種名としてもちいられ,「トゥリケラトプス・エーラートゥス[ Triceratops elatus Marsh, 1891 ]」=「背の高いトゥリケラトプス」に使われています.

また,「エックスケルスス[ excelsus ]」も「高い」を意味します.これは excellent =「優秀な」の語源だといわれていますね.これもそのまま種名としてもちいられ,「ブロントサウルス・エックスケルスス[ Brontosaurus excelsus Marsh, 1879 ]」=「すばらしいブロントサウルス」と訳しておきましょう.
 さらに「プローケールス[ procerus ]」も「高い.丈のある」を意味し,サウルスに結びついて「プローケーロ・サウルス[ Procero-saurus Fritsch, 1905 ]」=「丈のある龍」という属名に使われています.

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【ここに登場した恐龍】

Hypselosaurus Matheron, 1869
【模式種】 Hypselosaurus priscus Matheron, 1869
【産 地】欧州(後期白亜紀)
【分 類】McIntosh (1990, p. 351)
SAUROPODOMORPHA Huene, 1932
  SAUROPODA Marsh, 1878
   TITANOSAURIDAE Lydekker, 1885
   Hypselosaurus Matheron, 1869

Hypsibema Cope, 1869
【模式種】 Hypsibema crassicauda Cope, 1869
【産 地】北米(後期白亜紀)
【分 類】Nomen dubium
 標本は二つの尾椎,上腕骨・脛骨の一部,その他からなる.hadrosaurids に属する骨格と思われるものの,属-種の定義に耐えられる標本とは考えられない.

Hypsilophodon Huxley, 1869
【模式種】 Hypsilophodon foxi Huxley, 1869
【産 地】英国(前期白亜紀)
【分 類】Sues & Norman (1990, p. 500)
ORNITHOPODA Marsh, 1881
  HYPSILOPHODONTIDAE Dollo, 1882
  Hypsilophodon Huxley, 1869

Hypsirophus Cope, 1878
【模式種】 Hypsirophus discurus Cope, 1878
【産 地】北米(後期ジュラ紀)
【分 類】不詳
 標本は複数の脊椎骨からなる.Galton (1990, p. 450)はSTEGOSAURIAに入れているが,もちろん脊椎のみではnomina dubiaと判断している.しかし,Molnar, Kurzanov & Zhiming (1990, p. 189)はAllosaurus fragilis Marsh, 1877に含まれるとしている.

Hypsirhophus Cope, 1879
【模式種】 Hypsirhophus seeleyanus Cope, 1879
【産 地】北米(後期ジュラ紀?)
【分 類】Galton (1990, p. 450)
STEGOSAURIA Marsh, 1877
  STEGOSAURIDAE Marsh, 1880
  Stegosaurus Marsh, 1877
   Stegosaurus armatus Marsh, 1877 (= Hypsirhophus seeleyanus Cope, 1879)
 標本は椎体,肢骨,歯からなる. Stegosaurus armatus Marsh, 1877の同物異名と見なされている.

Laosaurus altus Marsh, 1878
【産 地】北米(後期ジュラ紀)
【分 類】Sues & Norman (1990, p. 500)
ORNITHOPODA Marsh, 1881
  DRYOSAURIDAE Milner et Norman, 1984
  Dryosaurus Marsh, 1894
   Dryosaurus altus (Marsh, 1894) (= Laosaurus altus Marsh, 1878)
 標本はほぼ完全な骨格(除,頭部).当初はLaosaurus Marsh, 1878に含まれるとして記載されたが,同標本に基づいて Dryosaurus Marsh, 1894を設立.altusはDryosaurusに編入された.

Amphicoelias altus Cope, 1877
【産地】北米(後期ジュラ紀)
【分類】McInosh (1990, p. 349)
SAUROPODOMORPHA Huene, 1932
  SAUROPODA Marsh, 1878
   DIPLODOCOIDAE Marsh, 1884
    DIPLODOCINAE Janensch, 1929
    Amphicoelias Cope, 1877

Pleurocoelus altus Marsh, 1888
【産地】北米(前期白亜紀)
【分類】McIntosh (1990, p. 348)
SAUROPODOMORPHA Huene, 1932
  SAUROPODA Marsh, 1878
   BRACHIOSAURIDAE Riggs, 1904
   Pleurocoelus Marsh, 1888

Ornithomimus altus Lambe, 1902
【産地】北米(後期白亜紀)
【分類】Barsbold & Osmolska (1990, p. 226)
THEROPODA Marsh, 1881
  ORNITHOMIMOSAURIA Barsbold, 1976
   ORNITHOMIMIDAE Marsh, 1890
   Struthiomimus Osborn, 1917
    Struthiomimus altus (Lambe, 1902) (= Ornithomimus altus Lambe, 1902)
 一時期, Ornithomimus Marsh, 1890 と Struthiomimus Osborn, 1917とは同物異名と考えられ, Ornithomimus にまとめられていたが,現在では別の属を形成していると考えられ, Ornithomimus altus Lambe, 1902はStruthiomimus Osborn, 1917に属するとされている.

Bison alticornis Marsh, 1877
【産地】北米(後期白亜紀)
【分類】Nomen dubium
 標本は,一組の眼窩上突起からなる.当初,Marshはバイソン[Bison]の角と間違えて記載した.現在ではTriceratops類の眼窩上突起と考えられている.Triceratops horridus Marsh, 1889とする場合もあるが,この標本では属種は決められないとする場合が多い.

Trachodon altidens Lambe, 1902
【産地】北米(後期白亜紀)
【分類】Nomen dubium
 標本は,左の下顎骨(付属,歯).HADROSAURIDAE Cope, 1869には属すると思われるが,種を定義できる標本とは考えられない.

Hypacrosaurus altispinus Brown, 1913
【産地】北米(後期白亜紀)
【分類】Weishampel & Hornar (1990, p. 557)
ORNITHOPODA Marsh, 1881
  HADROSAURIDAE Cope, 1869
   LAMBEOSAURINAE Parks, 1923
   Hypacrosaurus Brown, 1913

Altispinax Huene, 1923
【模式種】Megalosaurus dunkeri Dames, 1884
【産 地】欧州(前期白亜紀)
【分 類】Molnar (1990, p. 307)
THEROPODA incertae sedis
 Altispinax Huene, 1923
  Altispinax dunkeri (Dames, 1884) (= Megalosaurus dunkeri Dames, 1884)
 標本は複数の歯・脊椎からなる.当初は Megalosaurusとして記載されたが, Huene (1923)が Altispinaxとして再定義した.無効名とされる場合も多い.

Brachiosaurus altithorax Riggs, 1903
【産 地】北米(後期ジュラ紀)
【分 類】McIntosh (1990, p. 347)
SAUROPODOMORPHA Huene, 1932
  SAUROPODA Marsh, 1878
   BRACHIOSAURIDAE Riggs, 1904
   Brachiosaurus Riggs, 1903

Triceratops elatus Marsh, 1891
【産 地】北米(後期白亜紀)
【分 類】Dodson & Currie (1990, p. 612)
CERATOPSIA Marsh, 1890
  NEOCERATOPSIA Sereno, 1986
   CERATOPSIDAE Marsh, 1890
    CHASMOSAURINAE Lambe, 1915
    Triceratops Marsh, 1889
     Triceratops horridus Marsh, 1889 (= Triceratops elatus Marsh, 1891)

Brontosaurus excelsus Marsh, 1879
【産 地】北米(後期ジュラ紀)
【分 類】McIntosh (1990, p. 349)
SAUROPODOMORPHA Huene, 1932
  SAUROPODA Marsh, 1878
   DIPLODOCIDAE Marsh, 1884
    DIPLODOCINAE Janensch, 1929
    Apatosaurus Marsh, 1877 (= Brontosaurus Marsh, 1879)
     Apatosaurus excelsus (Marsh, 1877) (= Brontosaurus excelsus Marsh, 1879)

Procerosaurus Fritsch, 1905
【模式種】 Procerosaurus exogiraru Fritsch, 1905
【産 地】欧州(後期白亜紀)
【分 類】不詳




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