「広い」

もひとつ,「重厚長大」に類する言葉で「広い」を紹介しましょう.

「プラトス[ πλάτος ]」=「広さ」
  >「プラテュス[ πλατύς ]」=「広い」
   >「プラチュ・[ platy- ]」=「広い」
 「プラテーア[ platea ]」=「広い道,家の広い場所,中庭」
  >「プラテオ・[ plate(o)- ]」=「広い」
 「ラートゥス[ latus ]」=「広い」
 「エウリュス[ ευρύς = eurys ]」=「広い」
  >「エウリュス[euryus]」 = 「広い」

ギリシャ語の「広い」を意味する言葉には,「プラテュス[πλατύς]」があり,これからラテン語の語根「プラチュ・[ platy- ]」が生まれました.また,「広い道,家の広い場所,中庭」という意味の「プラテーア[ platea ]」からは「プラテオ・[ plate(o)-]」という語根が生まれています.
 プラタナスはギリシャ語で「プラタノス[ πλάτανος]」,ラテン語で「プラタヌス[ platanus ]」で,広い葉と大きく広がる枝ぶりから名づけられています.
 「プラチュ・」はサウルスと結びついて「プラチュサウルス[ Platysaurus Agassiz, 1846 ]」=「広い龍」に使われています.また,「・オドン」=「〜歯」と結びついて「プラチュ・オドン[ platy-odon ]」=「広い歯」になり,種名として「パラエオサウルス・プラチュオドン[ Palaeosaurus platyodon Riley et Stutchbury, 1836 ]」=「広い歯のパレオサウルス」に使われています.
 「プラテオ・」もサウルスと結びついて「プラテオ・サウルス[ Plateo-saurus Meyer, 1837 ]」=「広い龍」になり,語尾に「・ウス[ -vus]」つけて「プラテオ・サウラ・ウス[ Plateo-saura-vus Huene, 1932 ]」=「プラテオサウルスのような」になります.

ラテン語の「ラートゥス[ latus ]」も「広い」という意味で,これはこのまま種名としてもちいられています.
 「パラエオスキンクス・ラートゥス[ Palaeoscincus latus Marsh, 1892 ]」=「広いパラエオスキンクス」,「トロサウルス・ラートゥス[ Torosaurus latus Marsh, 1891 ]」=「広いトロサウルス」,「アムプィコエリアス・ラートゥス[ Amphicoelias latus Cope, 1877 ]」=「広いアムプィコエリアス」など.

ギリシャ語の「エウリュス[ ευρύς ]」も「広い」という意味を持ちますが,これはもともと「エウリュアロス[ ευρύαλος]」=「広い脱穀場」の意味が単に「広い」の意味に転化したものだといいます.これからラテン語の語根「エウリュ・[ eury- ]」が生じます.この「エウリュ・」が「頭の」を意味する「ケプァロ・[ cephal(o)-]」と結びついて「エウリュ・ケプアルス[ eury-cephalus]」=「広い頭の」が合成され,「トゥリケラトプス・エウリュケプアルス[ Triceratops eurycephalus Schlaikjer, 1935 ]」=「広い頭のトゥリケラトプス」として使われています.

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【ここに登場した恐龍】

Platysaurus Agassiz, 1846
【模式種】不詳
【産 地】不詳
【分 類】不詳
 Platysaurus Agassiz, 1846はPlateosaurus Meyer, 1837の同物異名とされている( Steel, 1970, p. 54など)が,標本などの詳細は不明.

Palaeosaurus platyodon Riley et Stutchbury, 1836
【産 地】英国(後期三畳紀?)
【分 類】不詳
 Steel (1970, p. 25)によれば, Riley & Stutchbury (1836) が Palaeosaurus として記載したが, Palaeosaurus はすでにGeoffroy (1833)によって使われており,Palaeosaurisucus Khun, 1959として再定義された.しかし,その後,この標本およびこれらの学名で引用している論文が見つからない.

Plateosaurus Meyer, 1837
【模式種】 Plateosaurus engelhardti Meyer, 1837
【産 地】欧州(後期三畳紀)
【分 類】Galton (1990, p. 335)
PROSAUROPODA Huene, 1920
  PLATEOSAURIDAE Marsh, 1895
  Plateosaurus Meyer, 1837

Plateosauravus Huene, 1932
【模式種】 Plateosaurs stormbergensis Broom, 1915
【産 地】南アフリカ(後期三畳紀)
【分 類】 Galton (1990, p. 336)
PROSAUROPODA Huene, 1920
  MELANOROSAURIDAE Huene, 1929
  Euskelosaurus Huxley, 1886 (= Plateosauravus Huene, 1932)
   Euskelosaurus browni Huxley, 1886 (= Plateosaurus stormbergensis Broom, 1915)
 南アフリカ産の二種の Plateosaursが,ヨーロッパ産のよりも大柄である所から,この二種を別にして Plateosauravus Huene, 1932が提唱されたが,現在では,これらは二つともに Euskelosaurus browni Huxley, 1886に含まれるものと判断されている.

Palaeoscincus latus Marsh, 1892
【産 地】北米(後期白亜紀)
【分 類】Nomen dubium
 標本は,複数の歯からなる.標本はANKYLOSAURIA Osborn, 1923に属すると思われるものの,歯のみでは,属-種の定義に耐えない.

Torosaurus latus Marsh, 1891
【産 地】北米(後期白亜紀)
【分 類】Dodson & Currie (1990, p. 612)
CERATOPSIA Marsh, 1890
  NEOCERATOPSIA Sereno, 1986
   CERATOPSIDAE Marsh, 1890
    CHASMOSAURINAE Lambe, 1915
    Torosaurus Marsh, 1891

Amphicoelias latus Cope, 1877
【産 地】北米(後期ジュラ紀)
【分 類】McIntosh (1990, p. 348)
SAUROPODOMORPHA Huene, 1932
  SAUROPODA Marsh, 1878
   CAMARASAURIDAE Cope, 1877
    CAMARASAURINAE Nopcsa, 1928
    Camarasaurus Cope, 1877
     Camarasaurus supremus Cope, 1877 (= Amphicoelias latus Cope, 1877)
 標本は,細身の四肢を持つとして,A. altusとともに新属 Amphicoelias Cope, 1877として記載された.しかし,これらは Camarasaurus supremus Cope, 1877の未成熟な個体であったと考えられている.

Triceratops eurycephalus Schlaikjer, 1935
【産 地】北米(後期白亜紀)
【分 類】Dodson & Currie (1990, p. 612)
CERATOPSIA Marsh, 1890
  NEOCERATOPSIA Sereno, 1986
   CERATOPSIDAE Marsh, 1890
    CHASMOSAURINAE Lambe, 1915
    Triceratops Marsh, 1889
     Triceratops horridus Marsh, 1889 (= Triceratops eurycephalus Schlaikjer, 1935)
 標本は,ほぼ完全な頭骨と下顎骨からなり,当初は新種として記載されたが,現在では, Triceratops horridus Marsh, 1889の同物異名と考えられている.




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