緒言代わりに=学名のちょっとした読み方=

博物館に務めていたころ,扱っていたものが主に化石だったために,和名がほとんどなく,学名をそのまま使わなければならないことがほとんどでした.
 それに対する一般の反応は…,

「舌を噛みそう」,「訳わかんねー」.

なんとか,なじみやすくする方法はないか.かなり悩みました.
 インチキな“和訳”を創ったりもしましたが,こちらの方がなじみやすくするのが大変そうでした.
 そんなときに出会ったのが,小森厚氏の「どうぶつ学名散策」(東京書籍刊)でした.こちらは現生動物を題材に,その「学名に親しもう」ということで書かれたものです.つまり,学名に使われているギリシャ語・ラテン語を解説して,学名の世界に慣れ親しんでもらおうというのが目的のようです.
 かなり参考になりました.
 いつか,化石を題材にして,小森さんのような本を書きたい.そんな風にも思いました.そして,学名の意味を調べて,その意味をよくわかった上で使えば,きっとそれを聞く人も親しみを持ってくれるに違いない.という風に考えを改めました.

ところが,私は大学時代に「層位“古生物”学教室」に在籍していたのにもかかわらず,古生物学は,ほとんど独学で勉強してました.ましてや,ラテン語やギリシャ語なんてま るで縁がない環境でした.就職した博物館は学芸員は私一人で,指導してくれる人どころか相談する相手もいませんでした.これはラテン語どころか,博物館活動全般についても同じことでしたがね…….
 さてさて,どうやって学んだらいいのかもわからない状況で,とりあえず,辞典をいくつか買い込んで,その時あつかっている化石の学名がどういう意味なのかを調べることから始めました.だから,私のラテン語やギリシャ語は単語の意味しかわからない,かなりインチキなものです.だって,文法もろくに知らないのですから.
 でも,いいのです.
 私は学名の意味がわかればいいので,ラテン語やギリシャ語で会話するつもりはないのですから.

さて,学名のラテン語やギリシャ語についてわかりやすく解説してくれている本はないかと,ずーっと探してきましたが,そういう本はありません.前出の小森厚さんの本が唯一といっていいものです.
 なければ,自分で書いてしまえ!
 なんてね.

学名はラテン語か,ギリシャ語その他をラテン語化した語で書き表すことになっています.「ラテン語造語法」などという本があればいいのですが,学名に精通した学者さん達でも,ラテン語学者でも,なかなかそういう本は書いてくれません.で,数少ない辞書や文献を引っ張り出して,解釈した結果がこれ「学名であそぶ=恐竜編=」です.間違いが多々あるとは思いますが,公表すれば誰かがその間違いを指摘してくれて,そのうちに少しづつ正しくなっていくだろうと開き直って,さあやってみよう!

その前に,いくつか必要最低限のことを解説しておきます.でも面倒くさいことが多いので,そういうことが嫌いなひとは跳ばして本文にいってしまってもけっこうです.本文を読んでいる最中に気になったら戻ってきてください.

「学名」をつかうこと
 ● 命名規約
 ● 二名法
 ● 亜属
 ● 亜種
 ● 化石の「種」
 ● 生物の階層性
 ● 学名の発音
 ● ギリシャ語辞典・ラテン語辞典と参考書


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