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蝦夷地質学の四(1) 武田斐三郎

幕末のダ・ビンチ

武田 斐三郎

武田斐三郎についてかかれた本には,武内收太の「武田斐三郎」と白山友正の「武田斐三郎伝」がある*1.両著とも,斐三郎の「東洋のダ・ビンチ」・「幕末のダ・ビンチ」というキャッチ・フレーズを紹介している.確かに,斐三郎の業績を見ると,多分野にわたり西洋の技術を実用化したことは事実で,同時代人からは驚異的であったかもしれない.だが客観的に見ると,レオナルド・ダ・ビンチのオリジナリティ豊かな仕事と西洋技術の翻案が主な仕事だった斐三郎を同列に論じるのはどうかと思う.
 同様に,「幕末のダ・ビンチ」というキャッチ・フレーズに対応して,その時代の箱館に西洋技術・文化が流入したことに対して「箱館ルネサンス」なるキャッチ・フレーズを使うこともあるようだが,ルネサンスは「再生」であり,箱館に再生されるべき和人の文化があったかどうかについては,非常に疑問だ.もちろん,“内地*2”で眠りについた文化が,箱館で再生したということであれば,異議は唱えない.
 では,斐三郎は「蝦夷地質学」上で,どのように位置づけられるべきなのか,すこしさぐってみたいと思う.なお,斐三郎にはたくさんの著書・翻訳書があるようだが,残念なことに,一般書店で入手できるものや図書館で読めるものはない.


蝦夷地質学の四(2)へ続く




*1 武内收太「武田斐三郎」と白山友正「武田斐三郎伝」:
どちらも,現在では入手しにくい本だ.不思議なことに両著とも昭和46(1971)年の発行であるが,竹内さんのほうが一月早く発行されている.斐三郎ブームでもあったのだろうか.竹内さんの本は「HTBまめほん」シリーズに含まれており,一般向けといえるだろう.白山さんの本は「北海道経済史研究所」という所から発行されている.北海道経済史研究所からは,北海道経済史研究所叢書のシリーズがたくさん刊行されているが,「武田斐三郎伝」内の広告を見るかぎり,このシリーズは白山友正さんの著作しかなく,なにか特殊な事情を想像させる.「武田斐三郎伝」自体も伝記というよりは,斐三郎研究の雑記帳という雰囲気が濃厚で,参考になるところは多いが,読み通すには難儀なところがある.

*2 内地:
北海道では,いまだに本州・四国・九州のことをこう呼ぶ.

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